高血糖がヤバイ！

高浸透圧性高血糖、ケトアシドーシスという症状についてお話します。

 

インスリンの不足によって血液中の糖をエネルギー利用できなくなり、脂肪が分解されて（体重が減り）、ケトン体が血液中に増え血液が酸性に傾き意識障害になる状態をいいます。脱水状態（口渇・多尿）もあります。そのまま放置すると昏睡状態になって命の危険に及びます。

 

以前、そんな症状を呈した患者さんがいたんです。診察日に来なくなり、携帯はほとんど出ないので連絡の取りようがありませんでした。

 

「今日診察いけますか？」と久しぶりに電話があったので「生きてたね！良かったー！」とスタッフみんなで話していました。でも予約時間になっても現れない。どうしたのかな？やっぱり来るのやめたかな？予約時間に遅れる事30分、ようやく来院。バイクで走ってたら途中で怖くなってジュース飲んで休憩していたと。お顔はすっかり痩せて足元おぼつかなく、ヨロヨロ歩き。半パンから出た足は傷だらけ。なんかおかしい。。

 

私：「どうしてましたか？連絡取れないから心配してたんですよ！」「体重6kg減ってるじゃないですか」（毎回診察時に体重を測ります）

 Tさん「しんどくてずっと動かれへんかったんやー。メシはコンビニのおにぎり、うどんとかそんなん食うとったわ。腹は減るからなー。のども乾いてしゃーないねん」

 私：「お薬飲んでました？」

 Tさん：「飲んでない」

 私：「インスリンは打ってた？」

 Tさん：「打ってない。忘れとったわ」

私：「いつから？」

 Tさん：「もう1-2か月なるかな～」（ちょっと、ヤバイんじゃないの？）

 

すぐに血糖値・A1cを測りました。血糖値：593　A1c：14以上（計測不可の表示が！）

すぐにインスリン注射をして入院の手配。ご家族がいないので妹さんへ電話。しかしよくここまでバイクで来れたな。途中で怖くなったって、何か意識障害出たのかな？何もなくて良かったけど。とりあえずベッドに横になって血糖値が下がるまで安静。のどが渇くから水分補給。

 

Tさんは2型糖尿病でインスリン注射と薬の併用をされていました。70歳で一人暮らし、毎日畑仕事をされています。自身の病気や体調には全く無関心で食べる事が大好き。食べ放題やバイキングでいっぱい食べるのが唯一の楽しみ。糖尿病を悪化させるタイプによくある傾向です。そして最近多い独居の高齢者に起こるこんな事。

 

血糖値は300までしか下がらなかったけど自宅へ帰る、入院はしたくないと言う。妹に迷惑はかけられないと言われましたがさすがにバイクで返せないので妹さんに迎えに来てもらいました。

 

また同じ事が起こらないようにきちんとインスリンを打つこと、薬を飲むことを何度も何度も念を押し、1週間後に妹さんと来院してもらう事にしました。妹さんには自宅近くか周りの方々がサポートしやすい環境の病院に移る事も考えて下さいとお伝えしました。

 

独居の高齢者問題。本人はもちろん周りの家族に突然ふりかかる負担。現在は在宅支援の方向に行きつつありますが私達は難しい問題を抱えています。